本文へ移動

ICT活用工事とは?徳島県主催のICT活用技術講習会で解説してきました。

ICT活用技術講習会(徳島県南部健康運動公園陸上競技場)に参加

2020年11月5日(木)、建設中の徳島県南部健康運動公園陸上競技場にて徳島県主催によるICT活用技術講習会が催されました。
弊社では、講習会の中のICT建機による現場施工(実演)について、八木建設株式会社様(阿南市)にご協力頂きながら講師を務めさせて頂きました。
本記事ではその時の様子やi-Constructionについてなどご説明いたします。
建設中の徳島県南部健康運動公園内の陸上競技場

ICT活用工事について

ICT活用工事とは?

まずICT活用工事とは、建設業において生産性の向上や労働環境の改善が目的である「i-Construction(アイコンストラクション)」という国土交通省が推進する取り組みの一部。
「ICT土工」という施策として、土木工事における以下プロセスにおいてICTを全面的に活用することが求められています。

  1. 3次元起工測量
  2. 3次元設計データ作成
  3. ICT建設機械による施工
  4. 3次元出来形管理等の施工管理
  5. 3次元データの納品

土木工事におけるこれらのプロセスそれぞれでICTを活用することにより、他業種と比較して低い生産性を向上させたり、労働力不足、労働災害の多さなどを解消してよりより労働環境にしましょう!というのが狙いというわけです。

国土交通省や徳島県におけるICT活用工事の実施状況

現状について、国土交通省発注工事における大規模工事(予定価格や土工量による)ではICT活用工事を実施するのが発注者により指定とされています。
またその規模に満たない中小規模工事においても、施工者希望型という形でICT活用工事を実施することで必要な経費計上が可能であったり、工事成績評点で加点評価されることも。
このように現状としては「まず慣れてもらう」というステップであり、今後数年がかりでICT活用工事を広めるとともに「真に生産性を上げる」ステップに移行していくことを目標としています。

一方徳島県発注工事においてもICT活用工事は現在試行段階。
国土交通省発注大規模工事のような発注者指定ではなく、受注者希望型(手上げ方式)であったり、冒頭でご説明した土木工事における5つのプロセスのうち一部でICTを活用する「簡易型ICT活用工事」なども認められています。(※いずれも受発注者間での協議の上で)

とはいえなかなか簡単には…

このように国土交通省や徳島県をはじめ各都道府県としてもICT活用工事を今後広めていく。というのは共通の目標。

しかし実際にICT活用工事を始めよう!と思っても、それに対応した測量機や建設機械が必要になります。
上記の各プロセスにおいて、例えば3次元起工測量においてはUAV(無人航空機)や地上型レーザースキャナー、ICT建設機械による施工においては3次元マシンコントロールやマシンガイダンスシステム、またそれらを搭載したブルドーザやバックホウなど…
これらを導入するには相当な初期費用が必要ですし、また実際に最新機器を扱って施工できる人材教育も必要です。
このようにコスト面だけでなく、従来工法とは考え方や工事方法なども大きく変わってくるため、ICT活用工事を始めるにはなかなかハードルが高いのも事実でしょう。

少しずつ理解を得るために

しかし今後、冒頭でもご説明したように、ICTを活用することで建設業の生産性の向上や労働環境の改善は重要なこと。
導入から運用にかけてたくさんの問題はありますが、使いこなすことができれば生産性も工事品質も上がり、使い方によっては十分に「元が取れる」またさらなる可能性も秘めているのがICT活用工事です。
その実際の現場においての活用事例を通して受発注者ともに理解を深め技術力を向上させよう!ということで開催されたのが今回の講習会。

3次元点群測量、ICT建機による現場施工の実演

本講習会ではUAV及び地上型レーザースキャナーを使用した3次元点群測量や、ICT建設機械を活用した実演が行われました。
弊社が担当させて頂いたのはICT建設機械による施工の実演。
八木建設株式会社様にご協力頂きながら、弊社測量サポート・サービス課生田社員により説明させていただきました。

自動追尾トータルステーション×グレーダーによる3次元マシンコントロール

3Dマシンコントロールシステム×グレーダーについて説明する弊社生田社員
モーターグレーダーによる施工は複雑なオペレーションのため、長年の経験や高い操作技術が必要であり、またその技術力により施工精度に差が出てしまうことも。
これを3次元マシンコントロールシステムを活用することで複数のレバー操作を自動制御し、オペレーターの技術力に関わらず高精度かつ効率よい施工が可能になります。

トプコン自動追尾トータルステーション「GT」×3D-MC「G-53x LPS」

トプコンの自動追尾トータルステーション「GT」シリーズとコマツ製モータグレーダ「GD405-7」に対応したマシンコントロールシステム「G-53x LPS」を組み合わせることで、細かい操作が必要なグレーダーを自動制御できるシステム。
トータルステーションとグレーダーを最大600mの範囲まで通信可能なBlutoothで接続、事前に設定した設計データに位置情報を合わせ、ブレードリフト(上下)やシフト(左右)を自動制御できることで、高精度かつ効率よい施工が可能になります。
高低の誤差が大きいGNSSではなく、上空視界にかかわらず自動追尾できるトータルステーションと組み合わせることで、ブレード位置の精度がより向上します。
トータルステーションでグレーダーを自動追尾することで位置情報を取得
トータルステーションが追尾しているのは、グレーダーに取付されているこの全周プリズム
ブレードの回転角度を検出するローテーションセンサー
ブレードの左右に取付けたIMU(慣性計測装置)で角度や加速度を計測。
カーナビのような感覚のコントロールボックス。上記センサー等で取得した位置情報などから、設計データに対するブレードの位置関係などが一目瞭然。
左:施工前 右:施工後。自動操縦で高精度な施工ができた。

GNSS×タイヤローラによる締固め回数管理

従来、盛土の締固めについては土の密度や含水比等を「点的」に測定していますが、これをICTを活用することにより「面的」管理を行っていくことで品質の均一化、転圧の過不足の防止、工期短縮などが見込めるというもの。
舗装ローラーと転圧管理システムについて説明する酒井重工業株式会社の寺野氏

酒井重工業 ICT転圧管理システム「Compaction Meister」

GNSSを用いた転圧回数管理システムである酒井重工業「Compaction Meister(コンパクションマイスター)」を舗装用ローラーに搭載、活用することで締固め品質の確認と管理が可能になります。
衛星により位置情報を取得、事前にアップロードした現場図面と合わせることでリアルタイムに施工している状況が映像で確認可能。
転圧作業を行った部分は回数により色表示が変化し(例えば1回目→赤、2回目→水色、3回目→青色…など)、簡単に過不足なく施工が可能になります。
この「Compaction Meister」を活用した動画がありますので、こちらをご覧いただくと分かりやすいですね。
締固め回数が表示される「Compaction Meister」ディスプレイ。写真ではイマイチ分かりにくいので、ぜひ上記動画で。

まとめ

以上のように従来の建設現場での作業風景とは大きく異なるICT活用工事。
これまでの、「長年かけて職人技を磨き、その先輩の背中を見て技術を覚える」というイメージから、「建設機械の操縦や測量技術が未熟な人でも、最新機器の操作に長ける若い人だからこそできる」という部分も多いにあるのではないでしょうか。
もちろん土木工事においてすべての場面でICT活用できるわけではなく、従来工法の方が優れる場面もまだまだたくさん。
さらに初期導入費用や人材育成など、ICT活用工事を始めるためのハードルも低くはありません。
しかし、真に使いこなすことができれば「元が取れる」、さらに国土交通省や県が推進するように、3Kと言われてきた労働環境を改善し、若者や女性など従来建設業界を敬遠しがちだった人材確保にも繋がるといった大きな可能性もあるのがICT活用工事。
弊社としても、今後もマシンコントロールシステムなどのご紹介を通してICT活用工事の魅力をお伝えしていきたいと思います!
TOPへ戻る